みずがめ記

既婚だけど単身でドイツにワーホリに来て、就労ビザで延長滞在。帰国してもドイツが好き。

パン屋でわかるドイツ人(2)

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パン屋は楽しい。

お客さんが笑顔で帰ってくれると嬉しい。

今回はドイツ人のパンのこだわりと、それを満たすための要求がすごいなとも感じるものを記録。ちなみにドイツ人、と呼んでるけど、ドイツに住んでる人々、といった方がいいのかも。国籍はバラバラかもしれないけど、何かがドイツらしさを作ってるのが不思議。

パンの材料をチェックする

99%のお客さんがパンの材料をきいてくる。小麦?ライ麦?スペルト小麦?それぞれの出産地は?それぞれの割合は?サワードウ?イースト?ビーガン?タネは何時間寝かせた?

わたしはお腹は強い方なので、何を食べてもピンピンしてるのですが、ドイツ人はそうでもないらしい。これは消化できない、具合が悪くなる、トイレに何回も行くことになる、などなど。または環境に良いことをしたい、自然に近いものが好き、といった気持ちから、中身をちゃんと知りたいのでしょう。

ライ麦100%のやつない?」と聞いてきて、小麦アレルギーなのかしら、と思っていると結局小麦100%のパンを買ってったりするのでたまにガクってする。いいんだけど、いいんだけど、全然いいんだけど。

パンの色をチェックする

5人に1人くらいが、「切り口見せて」と言ってくる。そしてパンの色を見て、「これで!」と言うときもあるし、「黒すぎるから別ので」と言うときもある。穀物が粒々しているのを好む人や、完全に粉になって入ってるのを好む人もいたり。黒いのが好きだったり、白いのが好きだったり、この黒さはどこからくるのか(着色料か、砂糖か、モルトか、なんなのか)を聞いてきたり。毎日何百という回数の接客してるけど、今まで小麦のパンが欲しいって言ってきたお客さんは5人以下ですかね。みんな小麦以外が好きなんだな。

パンがほしい欲がすごい

なにがなんでも自分の欲しているパンを手に入れたい!というドイツ人。強引すぎやしないか、と思うけど、それだけうちのパンはおいしいのだ、と思うようにしている。

棚の上から下までチェックする

パンの棚の一番下には、焦げてしまったり、形が悪かったり、売れないものを避難させているのですが、既に売れ切れてしまった商品がそこに避難させてあるのを見つけると「そこにまだあるじゃん。それちょうだい」と言う。「すみません、これは売り物じゃないんです」というと「なんで?どうせ捨てるんでしょ?」と食い下がる。

また、販売前の試作品をそこに避難させていたりすると、「その一番下にあるやつちょうだい」と言ってくる。「すみません、これは試作品で売り物じゃないんです」というと「試作品?わたし試食してあげるけど?」と食い下がる。

窓から見える工房もチェックする

同じく、売れないものや試作品を工房の方に避難させてあると、それを窓から見つけてやってくる。

「Semmelあるかな?」「残念ですが今日はもう売れ切れで」「そう。じゃぁ、またね」と言って帰ったお客さんがすぐに戻ってきて、「まだSemmelがあるのが外から見えてさ。3つちょうだい」「あれは売り物ではないんです」「そう、残念。またね」と言って再び帰っていったり。あとは売れ切れ閉店後にも施錠してあるドアを外から叩き、「パンまだあるわよね?裏にあるじゃない?」と訴える。

もはや見えないものもチェックする

「昨日売れ残ったパンある?」と聞いてくる。「ないです」と答える。多分、安く買いたいのか、2日経ったパンが好きなんだと思うけど、「ないです」という答えでは満足しない。だから「ちなみに売れ残ったパンはどうするわけ?」と聞いてきたりする。これにも答えるけど、「ふーん。ま、いいや。じゃぁこれちょうだい」と普通にパンを買ってお帰りになる。

「なんでわたしがここに来るときにいつもこのパンがないわけ?」と言うお客さん

食欲、というのはすごいもので、楽しみにしているときにそれがないとわかると人は怒り出す。自分が来たタイミングで欲しいパンがない(焼きあがっていない/売れ切れ)とわかると、もう。「どうしてないわけ?あなたたち、もっとこのパンを焼くべきだわ。この意見は重要だからちゃんと耳を傾けてね。」と真顔で言ってくる。

「予約もできますがいかがでしょう」と言っても「その日時に来れるかわからないもの」と言う。完全にタイミングが悪いだけだけど、なんかなんかなんか。

ドイツ人は感情豊かで、わたしは怒っています、というのを全身で表してくれる。わたしも怒りっぽい性格で、「怒ると顔に出るよね」と言われてきたので、自分てこんなんなのか、これは面倒臭いな、と思ったりする。

ちなみに笑顔がジェームズ・フランコ並みにキラーな人もたくさんいて、危うく恋に落ちそうで恐い。

パンの試食を要求する

ドイツで一般的なのかなんなのか、10人に1人くらいが「試食できたりする?」と聞いてくる。そのときに棚の1番下に、避難させてるパンがあって、かつ行列ができてなければ提供するけど、「本当に残念。この味がどんなだか本当に知りたいのに。本当に残念だわ」と言う。これには「ええ、すみません」と答えるけど、それで一体どうしろというのだとたまに思う。どうにかこうにかして試食できるように仕向けているのか・・・と最初は思っていたけど、もうサッパリすることにした。できません。はい。

 

と、「ぐぬぬ」となるエピソードを書きましたが、それはここに書き出せるくらいほんの一部です。たまになんとも言えずモヤモヤすることもあるけど、彼らの論理は彼らの論理。日本的に察する(=申し訳なさを植えつけたり、気遣いを強制して、自分の思い通りになるようにする)ことはやめて、「知らん」とパッカーンとすることにした。

いろんな人がいますね

いろんなお客さんいるけど、最近気付いたのは、感じの良い人は店に入ってから出て行くまで全て感じが良い。「こんにちはー!」って笑顔で入ってきて、すごく丁寧な言葉遣いで注文し(「このパンを1つお願いできるかしら。」)、お勘定を渡してくれるときにも「はい、どうぞ」、パンを渡すと「どうもありがとう」、そして去って行くときにも「ありがとうね!良い1日を!」と笑顔で。

ミニマムな人は真顔で「どうも」と入ってきて、何も言わずにパンだけ指差して「ひとつ」と言い、お金はカウンターに放り、パンを渡すと何も言わずに受け取って「じゃ」と去って行く。これも最初はモヤモヤしてましたが、きっとシャイな人なんだなと思うことにした。別の場面で同じような経験があって、でも他の人に「彼は愛想がないけど、不器用なだけなのよ。損をしてることが多いと思うけどね」と聞いて、そうかー。と思ったので、同じように不器用な人と思うようにしたら少し楽になりました。