みずがめ記

既婚だけど単身でドイツにワーホリに来て、就労ビザで延長滞在。帰国してもドイツが好き。

ドイツのオーガニックベーカリーで働くことにした

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念願の。ドイツで。パン屋で。働き始めた!

オープンするまでこれが現実なのか不安だったのでブログには書いてませんでしたが、現実になったので経緯を記録します。ちょっと長め。

仕事を得るまで

ドイツに来て「えいや」で応募したホテルの面接は5分で撃沈したワケですが、それから仕事についてちょっと考え直しました。そんなにいっぱい仕事できないので、慎重に選びたい。

ホテル

まずは引き続きホテル。ホテルのレセプションは自分がやったことのない領域であること、ドイツ語、英語、そして日本語も使えること、ホスピタリティが学べること、という点でやってみたい!と思いました。

広報、メディア

日本で一部の経験があり、興味もあり、新聞社とか広告会社とか、他の企業の広報部とかを見てみたり。

事務職

秘書系を見てみたり、アシスタント系を見てみたり。

IT系

日本で従事した経験があり、Webデザインとかアプリ開発とか見てみたり。

かっこいいやつ

留学時のホストファーザーには「インターナショナルな企業がいいと思う。BMWの広報とかアシスタントにしてみたら?履歴書にもハクが付くでしょ。ルフトハンザとかもどう?」と言われたけどイマイチぴんと来ず。確かにかっこいいけど。

わたしはあまり後先考えないタイプで、そのときの気分とか直感を大事にしています。気が乗らないやつはやらないし、その後でも気が乗ったらやるし。という。あと、よくわかんないけど楽しそうだからやる、とか。

やっぱりパン屋

「やっぱり」というのは、日本にいるときから自分の中で「パン屋!」と考えてたワケですが、「ドイツでパン屋さんで働く!」と正直に言うと「え?IT企業に10年近く勤めてきてパン屋?君、その後どうするつもりなの?」と驚かれたりする&わたしの中では何の問題もないけどそれを説明するのが面倒臭い&別に納得してもらう必要もない、ので、あんまり言ってませんでした。

ドイツでパン屋、というのはドイツでしかできません。日本にもドイツパン屋はいくつかあるのですが、現地の雰囲気というのは何にも代え難く・・・

ということで、パン屋の求人をひたすら探しました。最初はBretzelを自分で焼きたい!と思っていたのですが、パン職人について何の経験も資格も知識もないわたしはお話にならず。よし、じゃあ販売員だ!ということで探し、探し、探し、どれもこれも同じ内容でどうしようかなぁ、、、と思っていたところに、魅力的な求人が。

オーガニックベーカリーに応募

オーガニックは、大家さんの影響でちょっと興味を持ちました。普通のパン屋ももちろんいいのですが、やるなら新しいことをしたい、ということで。食べ物や環境に気を使うお客さんが来る = 誰も彼も来るパン屋ではない = それなりの知識とホスピタリティも必要、ということで、ちょっと敷居を上げました。

オーナーが書いた求人の掲示はドイツ語でないと魅力は伝わらないので和訳するのはやめときますが、「これだ!」という直感がはたらきました。新装開店のパン屋で、応募条件で特に魅力的だったのがこの一文:

ミュンヘンでとても新しいことを成し遂げたい人

すぐに書類を揃えて応募。するとすぐに返事が来て、「電話面接しましょう」と。電話面接は初めてでしたが、なぜか緊張せずに話せました。「ミュンヘンに住んでるの?販売経験は?朝7時開店だけどいい?」など簡単な質問をもらい、ワーホリで来ていてミュンヘンに住んでいること、学生時代のバイトで販売経験があること、社会人としてワークショップやイベントを主催して接客には慣れていること、朝型なので早起きは問題ないこと、などできる限りの情報を伝え、「うん、じゃあ一回会おうか!」というお言葉をいただき、「喜んで!」ということでジョブゲットです。5分で面接が終わったこと、ポジティブな結果だったこと、ドイツ語で電話できた自分にびっくりです。

面接終了から不安な日々

「会おうか!」というのは、もっかい面接かな?と思いましたが、行ってみたら開店予定のパン屋を見せてくれたというものでした。もちろんお互いのことも話して、「東京にも研修で行ったことあるよ!」とか、「なんでミュンヘンに来たの?」とか、「お給料いくら欲しい?」とか。あとは「ここにカウンターが来て、ここにオーブンがあって、・・・」など。「オープンは約1ヶ月後の4月8日か15日の予定なんだ」と聞いてから音沙汰なく日々は過ぎ、本当にオープンするのか?いや、もしかしてわたし面接落ちた?と不安になり始めた頃、

  • 4月5日に「ちょっと、服のサイズ早急に教えて!」という切羽詰まったメールが1通来て
  • 「M!ところでオープンいつ?」と返信してからまた音沙汰なくなり
  • オープン予定という4月8日が過ぎ
  • 4月13日に「17日空いてる?チームの自己紹介と、パンについての研修会しよう」と連絡が来て
  • オープン予定という4月15日が過ぎ
  • 4月17日に「ごめん、今日キャンセル!23日に延期!時間はまた連絡する!」と連絡が来て

面接終了から1ヶ月半、4月23日に顔合わせを行えたのでした。

やっとオープンが目の前に

4月23日。前回下見に行ったパン屋にはオーブンがあり、カウンターがあり、それから何よりパンの香りでいっぱいになってました。販売員はわたしを含めて3人。オーナーから、販売するパンを1つ1つ紹介され、材料や特徴を聞いて、メモしたり質問したり、それから試食したり。オーナーはもちろん、同僚2人もとてもいい人たちで安心しました。

家に帰ってからは勉強した内容を一覧表(パンの名前と材料と特徴)にして復習。図書館に行ってパンの本を借りてきて、サワードウ(って日本語で言うんですね。)について調べたり、味とか食感とか見た目に関するボキャブラリーを集めたり。

Brot backen in Perfektion mit Sauerteig

(この本、パンが63種類載ってて、写真が綺麗で、よく説明されてて、すごくよかった)

 

それからこの本で接客で使う会話やボキャブラリーを集めたり。

Deutsch in Handel und Verkauf

(この本、他にも"オフィス"とか"エンジニア"とかのシリーズがあって便利)

あとはトドメで、タンデムパートナーにお願いして接客シミュレーションしてもらったり。

それから4月25日にももう一回集まって、コーヒーマシンの扱い方を勉強して終了。ここでも同僚に接客シミュレーションに付き合ってもらい、あとはもう本番で学んでくのみ、な状態でいよいよ当日を迎えたのでした。

いよいよオープン

オープン当日までは現実のような現実じゃないような、でも現実で、開店しました。通りにはパンの香りが漂っていて、「いい匂いがして入ってきちゃった。何があるの?」というお客さんにパンを紹介したり、「小麦粉使ってないパンある?」に対して「はい、こちらはライ麦100%で・・・」とか、「うーん、おすすめは?」に対して「全部おいしいんですけど、個人的にはこのリンゴが入ってるのが大好きで・・・」とか勧めたり、最終的に「じゃあそれで!」と言われて会計したり、「コーヒーもいかがですか?」って聞いてみたり、お客さんにパンを包んで渡したり、「良い週末を!」って見送ったり、全部がすっごく楽しい。

うちのパンは本当にすごくおいしくて、もう他のパン屋のパンは食べれないくらいおいしくて、それはお客さんにも伝わっていて、

「さっき買ったんだけど全部食べちゃった。もっかい買いに来たわ」って戻ってきたり、

「同僚に紹介されて来ました。あれ、すっごくおいしかった。スパイス入ってるやつはこれ?」とか、

「ちょっと、パン焼いてる人いる?言いたいことがあるの。あなたのパン、最高においしいわ!」とか、

「おいしかった。友達にも買ってくから別々の袋に入れてね」とか。

勤務2日目にして幸せを噛み締めている

わたしはパンは焼いてないけど、そのパンを売れるのは最高に楽しいです。おつり間違えたり、会計間違えたり、パンの最適な保存方法をうまく説明できなかったり、失敗もありますが、パンを焼いてくれるオーナーと素晴らしい接客トークを繰り広げる同僚に教えてもらって進んでます。ワーホリの制限で6ヶ月しか働けないのがすでに寂しい。次回の勤務日、1ヶ月後、半年後にどんなことを思っているか、パン屋がどうなっているか楽しみです。いやー、直感を信じて応募してよかった。最高の職場です。

余談

ちなみに制服はUNIQLOのリネンシャツだったので誇らしげ。サイズMにしたのは大きな失敗で、「大きいでしょ!SとXSを注文しといたから!」と言って気を利かせてくれたオーナーに感謝です。XSでした。