みずがめ記

既婚だけど単身でドイツにワーホリに来て、就労ビザで延長滞在。帰国してもドイツが好き。

ミソフォニア(音嫌悪症)です、多分

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昨日、ミソフォニアという病気を知った。

そして、わたしはこの病気だと思う。

 

ビョーキだと騒いだり、同情とか憐憫を乞うことはしたくないが、知り合いがADHDと診断されて楽になったと言っていたように、私も楽になった。

今まで自分がおかしいと思って誰にも言えなかったことが、普通ではないにしろ、名前がついた現象であることがわかったから。

これこれこういう症状がある、って示してもらえることで、私だけが過敏で神経質で、私の問題ではないとわかってもらえるから。

ミソフォニアとは

このサイトによるとミソフォニアとは、

くり返される音を敏感に感じ取り、尋常ではない不快感を持ったり、怒りを爆発したり、パニックに陥ったりします。音を発する人に対して殺意をいだくことさえもあるのです。「あるいは自分もそうではないだろうか」と気になる人はミソフォニアかどうかの自己診断テストができますので試してみるのもいいでしょう。

 

ひとつの原因として考えられているのが、ミソフォニアは、脳の音を処理する機能がうまくいっていないためということです。ミソソフォニアの人にとっては、音がまるで鋭い凶器で脳をえぐられるかのように感じられます。極めて強い不安と回避行動につながることが多く、それがひどくなると苦痛に変わってくるのです。

 

もうひとつの原因として、規範意識との関連があります。『食事中は口を開けてはならない』と音を鳴らして食事している人に対して言ったり、あるいは『キーボードは静かに打たなければいけません』とパソコンを操作している人に対して言ったりするなど、こうあるべきだという強迫神経症に近い気持ちを持った人によく「あるある」なのです。

だそうで、私の場合は、鼻をすする音、くしゃみ、ティッシュを箱から引き出す音、口呼吸の音、唾液を飲み込む音、飲み物を喉を鳴らして飲む音、それから食器を片付けるときにぶつかる音、流し台にフライパンや食器を置くときにぶつかる音がトリガー音で、吐き気というか嗚咽、どうしようもなく悲しくて怖い気持ち、そして冗談ではなく殺意が生まれ、包丁を持って相手を今から刺そうとする自分、マグカップを窓に思い切り投げつける自分、窓から飛び降りる自分まで思い浮かべる。自分の耳をアイスピックで突き刺すか、引きちぎりたくなるときもある。

くしゃみが本当に嫌い

特にくしゃみの場合は全身の毛が逆立ち、身体がビクっとするのはもちろん、心臓がバクバクバクバクする。トリガー音は「ドッ。」と、何か私の体を背中から押しつぶすこともある。私の中には対戦ゲームのようなHP(ヒットポイント)があって、150あるとしたら、くしゃみをされると40くらいまで一気に削られる。バクバクする心臓をおさえて、落ち着こうとしているあいだに追加でくしゃみをされるとHPは枯渇する。それは回復しないので、その日はもう台無しになる。

相手に対しては、なぜ鼻をかまないのか、なぜくしゃみをするのか、なぜ鼻水が垂れるような寒い格好をしているのか、とか、なぜわざわざ喉を鳴らして飲む必要があるのか、とか、なぜ食器を丁寧に扱えないのか、なぜ音を立てずに生活できないのか、ということを思う。知り合いが大きなくしゃみをしていると、そのパートナーはなぜこれに平然と耐えられているのか不思議に思う。

 

知り合いと、「結婚生活をしていて相手(私の場合は夫)の何が嫌か?」と話していたときに「くしゃみ。」と答えたのだが、「くしゃみ?それが一番だなんて幸せなんだね〜」と言われたのを覚えている。私にとっては何を差し置いてもくしゃみが最も嫌悪するもので、夫が犯罪者になろうが、私に暴力を振るおうが、浮気をしようが、多額の借金を背負おうが、価値観が合わなかろうが、離婚するのはくしゃみの音に耐えられなくなったときというのは常に思っている。だからくしゃみくらいしか挙げることがないのではなくて、くしゃみが他の何よりも嫌過ぎるというのが本当なのだが、周りにはそれはわかってもらえないのだと気づいた。

 

くしゃみは私だってするし、怒るのも理不尽に思うが、この嫌悪感は自分ではどうしようもない。夫に「うるさい!」と怒鳴るのもかわいそうで、夫は夫で申し訳なさそうで、くしゃみをするたびに「ごめんなさい」と言ってきて、それが逆にムカついたりして、お互いにどうしようもなくて辛かった。それでも夫に聞こえる声の小ささで「るっせーな!」と言ったり、くしゃみを真似したり(私はたまに映画でも話している相手でも相手と同じ身振りや表情をしてしまうことがある)して、夫にもかなりストレスを与えていた。

いつから気になり出したか

この悩みは前からあったが、口を開けてクチャクチャ食べる人が気持ち悪いくらいだった。これも「なぜこの人は口を開けて食べるのか。家族に教えられなかったのか。それとも人の言うことを聞かない人なのか。相手のことは気にしない人なのか」という不思議の方が大きかったように思う。

 

鼻炎持ちの夫とは長い付き合いになるが、くしゃみが気になってきたのは結婚してからだし、最初は「くしゃみ大きいな」くらいにしか思っていなかったし、「風邪?」と気遣える余裕もあった。それが段々と気になるようになってきて、大きなストレスになり、私と同じような人はいるのか、「くしゃみ うるさい」「くしゃみ 大きい」などで探したが、単純にくしゃみが大きい人がいるというくらいで、私が探しているような結果は何にもヒットせず、私のような人はひとりもいないのだと悟った。私が神経質なだけなんだと思った。夫にも話したことはあるが、「音に敏感だよね」と言われるくらいだった。

だから私は単純に、体液が嫌いなのだと思っていた。鼻水、唾液、涙、汗、精液、血液が嫌いなのだが、これももしかしたら身体の内にあるべきものは人前で見せるものではないという規範意識があるからかもしれない。

 

私がドイツに渡って、何が一番嬉しかったかというと、「くしゃみから離れられる」ということだった。あの音を聞かなくて済む・・・!と思ったのは事実だし、一時帰国するときや、ドイツを去るときも、あぁ、また、くしゃみの生活がまた始まるんだな、と思った。

鼻をすする人に対して「鼻をかめばいいのに」という想いは、実はドイツでの生活が影響している。ドイツでは鼻をすするのは失礼にあたる(さっさとかめよ、と誰もが思っている)ので、「鼻はすすらない」という意識は私の中に強くある。ドイツ人のくしゃみの大きさ自体は日本人と変わりないが、くしゃみを聞いてもHPを削られることはなかった。ドイツでは相手がくしゃみをしたら "Gesundheit!"と声をかけるので、もしかしたらこの言葉を口にすることでガス抜きができていたのかもしれない。

ミソフォニアを知って

昨日はやはり夫の連日のくしゃみで激しい怒りと悲しみがまとわりつき、気持ちそのままにスマホで「くしゃみが嫌い」と検索したらなんとヒットした。ミソフォニアは最近研究結果が出てきている新しいものであるらしく、自分の現象が説明されていて驚いたし、同じように悩んでいる人がいるのを知って解放された気持ちになった。

 

これまでも密かに耳栓をして音を軽減させていたが、夫に怒りを覚えつつも申し訳ない気持ちを持って欲しくない気持ちもあり、遠慮していた。でも昨日、ミソフォニアを発見して夫にも記事を見せ、耳栓をすることを話した。耳栓は100均のもので、これも図書館で勉強するときに他人の呼吸音とか鼻をすする音が気になるという理由でかなり前に買ったものなので、このときから何か始まっていたのかもしれない。この耳栓は完全に音を遮断しないけど、気になる音を小さくしてくれるのがいい。これがあれば大きなくしゃみでもケロっと耐えられるので、くしゃみ自体じゃなくて音が嫌なんだと思う。

 

ミソフォニアの人のブログや手記などを読んでいると、ストレスがたまっているときに敏感になるらしいことがわかった。私も気にならないときと、トリガー音が1度起こっただけで叫び出したくなるときと幅がある。確かに今週は思い当たるストレス要因があったので、それで余計に敏感になっているのかもしれない。

強い規範意識というのも原因であるようなので、耳がおかしいとかそういうことではないのもわかる。気の持ちよう、といったらそうなのかもしれない。病が気から起こるのもそうだと思う。これも幅があって、たとえば偏頭痛が来たときには「がんばってしまったんだな、自分。休め休め」と思えるときもあったし、「なんで今くる?なんでここ耐えられないの自分?」と思うときもあった。だから今、ストレスを抱えるような環境にしている自分に「あーあ」とも思うし、「んー、まー、いいんじゃない?」とも思う。

 

今はこのことは夫にしか話していないし、家族にも同僚にも言う必要は感じていない。病院に行くつもりもさらさらない。けれど、ミソフォニアというのがあることは知って欲しいと思うので、ここに綴った。